■工学研究のあり方考える
あらゆる工学分野融合
生研学術講演会
第15回生研学術講演会「環境問題の視点からこれからの工学研究を考える」が1月22日、本学生産技術研究所B棟7階第一会議室で行われた。今回の学術講演会は、資源・エネルギー、リサイクル、地球環境保全といった問題に対し、自然、人間・社会、製品といった視点から問題を明確にし、これからの工学研究のあり方について考えるもので、安井至教授ら五人の教官がそれぞれの研究分野の視点から講演を行った。【2面に関連記事】
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講演に先立ち、本学生産研所長の坂内正夫教授が開会の挨拶として、環境というのは極めて幅広く、工学の全分野と結びついており、工学だけではなく、これからの社会がどうあるべきかというような理念にも大きく影響を及ぼすものであると述べ、あらゆる工学の分野を融合して新しい価値を作ることの必要性を強調した。
続いて、安井至教授が「ライフサイクルアセスメントの持続可能性」と題して講演を行った。講演の中で安井教授は、環境が人間の健康に影響を与える事例を挙げ、環境問題に関して開発し研究することにおいて、地球は長持ちするかもしれないが人類側が長持ちしないのではといった問題を提起し、様々な観点からの考察を示した。
加藤信介教授は、「室内環境汚染」と題する講演を行い、シックハウス問題における学際的研究の意義を説明し、今後重点的に検討すべき課題について考察を行った。
講演会の最後には浅田昭教授が閉会の挨拶を行った。浅田教授は、科学工業技術の進展が文明生活を育んできた一方で、現在人類社会が公害や環境破壊などの問題を抱えていることに触れ、工学研究を行う立場からも行政機関、産業界と連携して、環境に関して研究開発を進めていくことが重要であると述べた。
会場には環境問題に関心をもつ学生らが集い、講演に対し熱心に耳を傾け、活発な質問を投げかけた。
■人文社会系研究科に新専攻
日韓学術交流に弾み
本学大学院人文社会系研究科に2002年度より「韓国朝鮮文化研究専攻」が新設される見通しとなった。これは2001年6月に蓮實重彦・東大総長(当時)が李基俊・ソウル大総長との間で交わした協力宣言を踏まえて設置されるもので、日本における韓国朝鮮文化研究の拠点となることが期待される。
韓国朝鮮文化研究専攻は、韓国朝鮮歴史社会、韓国朝鮮言語思想、北東アジア文化交流の三つの専門分野で編成される。
歴史社会コースは、歴史学・社会学・考古学の三分野を複合し、古代から現代までの長い時間軸の中で、韓国朝鮮の社会と文化を研究する。
言語思想コースは、大きく言語と思想の二つの分野に分かれ、思想分野は、韓国朝鮮の古代から現代にいたる思想文化に関することすべてを、言語分野は、古代から現代に至る韓国朝鮮語の共時的研究・歴史的研究を幅広く扱う。
北東アジア文化交流コースは、広い歴史的・文化的文脈の中で韓国朝鮮を理解するために不可欠な方法や技術を、北東アジア諸地域との比較のもとに学ぶとしている。
このように各コースは既存の学問領域が複合的に組み合わさった編成になっており、専門性を前提としながらも、それを越えた分野横断的・総合的な教育を重視する。さらに専攻全体が一体となって、韓国朝鮮の歴史・文化を総合的に研究していくとしている。韓国朝鮮の歴史を総合的に研究する大学院課程は日本国内では初めてで、今後本格的な日韓学術交流へ向けて研究体制を整備することになる。入学定員は、修士課程12名、博士課程6名を予定しており、2002年度から2年間は修士課程のみの募集を行う。なお募集要項は、2月18日より人文社会系研究科大学院掛で配布される予定。
*光クロスコネクト
クロスコネクトは、中継回線相互の接続を切り替えるもの。現在電子的なクロスコネクトが使用されているが、高速化や伝送フォーマットの変更に伴い装置を改修する必要がある。これに対し光クロスコネクトは、光信号のまま切り替えることを可能とするため、速度やフォーマットの変更による改修を必要としない。大規模な光通信ネットワークを経済的かつ柔軟に構成する必須手段であり、国内外で開発が進められている。
■法学部が大学院・学部の改革案発表
本学大学院法学政治学研究科・法学部(渡辺浩研究科長・学部長)は24日、司法制度改革の柱として2004年に設置予定の「法科大学院」設立を含む大学院・学部の改革骨子案を発表した。同案によると、現行の研究科修士課程の4つの専攻は、法科大学院に当たる「法曹養成専攻」や専門研究者を養成する「基礎法政専攻」(いずれも仮称)など3つの専攻に改組される。また法曹養成専攻の1学年の定員は、法学部卒業者向けの2年コース200人と他学部卒業者向けの3年コース100人の計300人を予定している。同案には法学部の定員を590人から400人に減らし、少人数制の授業や演習などを増やすことも盛り込まれている。
■名誉博士号第1号決まる
本学はケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長のアマルティア・セン氏に名誉博士号を授与することを決めた。
本学は学術文化の発展に特に顕著な貢献があった人または本学の教育研究の発展に特に顕著な功績があった人に対し、「東京大学名誉博士」の称号を授与する制度を昨年12月の評議会で決定した。セン氏は、開発と貧困の問題に関する研究業績により、広範な学問分野にインパクトを与え、世界の学術文化の発展に対しすぐれて顕著な貢献をなしたことが評価され、名誉博士号の授与が決定された。セン氏はこの制度による最初の名誉博士となる。
名誉博士号の授与式ならびに記念講演会は2月19日(火)に開催される予定。
【アマルティア・セン氏】
1933年インド生まれ。59年ケンブリッジ大Ph・Dを取得。その後発表した『集合的選択と社会的厚生』で厚生経済学に倫理的側面を復活させるきっかけを与え、理論的には76年に発表した5つの論文で貧困指数を提案し、実証分野では81年の『貧困と飢餓』でエンタイトルメントという新しい概念を導入し飢餓の分野に応用した。その後も貧困・飢餓・生活の質に関する研究を行う。88年からハーバード大教授、98年1月より現職。同年にはノーベル経済学賞も受賞。
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